2013年7月17日水曜日

①働くアリ、怠けるアリ と パレートの法則 の裏話(全体最適の本質とは?)


内閣府経済社会総合研究所が主催するサービス・イノベーションに関するテーマで副題が「理学は実業の諸問題を解決できるか?」というなかなかアカデミックな内容ですね。

話を聞けば聞くほど面白い内容で、数学や物理学など理学と呼ばれる知識と手法を、ビジネスの現場に落とし込んでイノベーションを生み出すという実証実験に取り組んでいて、その対象となる企業担当者や大学教授が集まったシンポジウムでした。

実際ビジネスの現場では理学よりも、職人的に蓄積されたノウハウと直感に頼っている要素が多いと思いますが、あえて理学で解析して、最適なアプローチを探りイノベーションに繋げていこうという主旨です。

興味深い話が盛り沢山ありましたが、今回はその一つを紹介したいと思います。

菅原 研氏(東北学院大学教養学部情報科学科 准教授)のお話です。

菅原氏の専門分野は自律分散システムだそうで、全体が個々の自律的な部分によって構成されるシステムを研究されていて、蟻の生態についても研究されています。

蟻はエサを見つけたり、運んだり、全体がまるでひとつの生物のような生態をしていることは皆さんご存じだと思いますが、マネジメントや人事系の例え話として「パレートの法則」という話があります。

「パレートの法則」とは【働くアリ:怠けるアリ = 8割:2割】 という比率があって、その集団から怠けるアリを取り除き様子を見てみると、100%だった働くアリの中から2割が怠けるアリに変化していく、つまり自然界ではどうやっても怠けるアリが2割出現するという話です。

これは確かに菅原氏も研究によりアリの振る舞いを確認していて、その要因を突き詰めるとひとつの仮説が浮かび上がったそうです。


実は怠けるアリに全体最適の鍵があったということです。

・働くアリ=フェロモンのトレースが優れているアリ
・怠けるアリ=フェロモンのトレースが鈍感なアリ

と定義し、アリの活動を観察すると面白い動きを発見したそうです。

エサを発見したアリはフェロモンを分泌しながら巣穴に戻り、仲間に知らせます。仲間のアリはフェロモンを正確にトレースしながらエサまでたどり着き、巣穴まで運ぼうとします。

その活動の中で、鈍感なアリは、フェロモンを捉えられずに道筋を外してしまいます。ただ外しても歩きまわっているうちに道筋に戻る事は出来ます。

鈍感なアリが迷って道筋を外し、戻る事が繰り返される事で、ショートカット、つまり最短距離の道筋が形成されてくる事が分かったそうです。


このように全体の効率化のために「揺らぎ」を起こしているのが鈍感なアリであるという菅原氏の仮説です。

菅原氏がこの説明をすると企業の方の多くは「怠ける人間も必要だ」という理解をされるそうなのですが、菅原氏によれば本質的には「揺らぎ=怠ける」が一定の割合を越えると、全体システムが破たんするそうです。

つまり全体システムを最適化するには、予想外の動きをする要素(個体)が一定の割合で必要であり、それによって全体システムが成長していくということです。

逆の視点では、揺らぎ無く高度に最適化された全体システムは、外的変化が起きた時には破たんする可能性が高いということだそうです。

ビジネスや企業に置き換えると、例えば短期的視野で外的経済状況に合わせた組織を構築すると、外的変化が起これば、ひとたまりもなく機能しなくなる。一方、短期では少々非効率な組織であっても柔軟で、予想外の個体を残しておくと外的変化が起こってもすぐに変化出来る力を持っている。

これがいわゆる「働くアリ、怠けるアリ」とパレートの法則とが関係づけられている話、の本質部分だそうです。

自然はこういった全体バランス、生き残る知恵が備わっていることに感動です。

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